岩見沢市は水田作を中心とする農業地帯である。行政面積(48,102ha)の約41.2%を農地が占める国内有数の食料生産基地である。農業就業人口(販売農家)は2,686人であり(H27 農林業センサスより)H22年に比べ15.4%の減少となっている。また、平均年齢も増加傾向にあり、57.1歳となっている。この状況下の中で、耕作面積が減少せず、1戸当たりの経営耕地面積(販売農家)は16.7haとなっており、H22から2.5ha増え、労働力の確保及び営農作業の効率化が喫緊の課題となっている。
当該地域では、農業者が「いわみざわ地域ICT(GNSS等)農業利活用研究会」を平成25年に設立し、農業気象システム構築、オートステアリングの導入を推進し、市役所、JA、研究機関と連携の上、スマート農業技術に関わる各種研究開発実証に参画し、乾田直播栽培の導入も加え、空知型輪作体系(水稲を畑作の一品目として取り扱う輪作体系)の取組も増加している。これには、基盤整備(地下灌漑システム)が必須であるが、市内全域で整備は行われておらず、従来型の移植型水稲栽培の面積も大きい。
このような情勢下で、従前の自宅そばの目の届く範囲における作業だけでなく、遠隔圃場でも情報の収集(生育状況、気象、地温、水温、土壌水分等)を行い、作業の無駄を排除して高効率化を図るとともに、機械購入費削減のために農家の農機共同利用が必要となっている。また、生産物の詳細な生産コストを把握し、利益の大きい作物栽培や物流業者への販売(国内外)に向けた精緻な価格分析も求められている。しかしながら、現状では圃場情報(生育ステージ把握、地温、水温、土壌水分等)の収集・管理、作業内容の記録及び地域内の情報共有は全く進んでおらず、今後の大規模水田地帯の維持においてスマート農業の地域実装は速やかに着手すべき地域課題となっている。
本実証では、① センサネットワーク(水田水温・水位、気象観測情報、予察情報、定点監視カメラ画像等)の構築及びリモートセンシング解析による広域生育状況の把握、② ロボットトラクタ、自動給水弁等を活用した労働時間削減と肥料の可変散布の実施、③ 圃場毎のセンシング情報、農機(ロボットトラクタを含む)の稼働情報を収集・集約して圃場単位の投入コストの試算及び他作物導入に向けた余剰労働力の確保、④ 生産コストの精緻な分析から国内外への作物販売計画の立案、⑤ グループ内の農機共同利用と営農ノウハウの共有の実現を行うことで、営農コストの削減と農家収益向上の実現を目指すものである。
1.センサネットワーク構築及びリモートセンシング解析による広域生育状況の把握
2.ロボットトラクタ、自動給水弁等を活用した労働時間削減と可変施肥の実施
3.ほ場毎のセンシング情報、農機(ロボット含む)の稼働情報を収集・集約して、ほ場単位の投入コスト試算及び他作物導入に向けた余剰労働力の確保
4.生産コストの精緻な分析から国内外への作物販売計画の立案
5.グループ内の農機共同利用と営農ノウハウ共有の実現
全体戦略としてコメの生産コストを政府目標の4割削減(9,600円/60kg)よりさらに高い5割削減(8,000円/60kg)と農家所得の20%増を目指す。作業別の目標値は以下とする。また、資材費等の積算根拠については対象農家のH29年度実績を基に数値設定を行う(参考 対象農家における水稲収益)。
① 耕起・整地 ロボットトラクタ導入による労働時間削減:30%
② 栽培播種(乾田直播) ロボットトラクタ導入による労働時間削減:30%
③ 水管理
・移植水稲・直播栽培によらず巡回作業時間の削減(汎用型水田水位・水温センサ設置):30%
・自動給水弁設置箇所については、水管理作業時間削減:80%
④ 追肥・防除 UAV、高頻度周回人工衛星画像等の情報収集による適正散布時期の決定及び可変散布による収量・品質の均一化に伴う歩留り率の向上による収量の改善:10%
⑤ その他
肥料投入量の適正化、作業人員適正配置、ロボットトラクタはじめ農機の共同利用、水稲以外の畑作物導入及び流通業者との連携などによる収益増:20%
④の収量向上効果(10%)にその他の効果のコスト削減効果を加え、さらには、機械共用による機材導入コスト等の経費類の削減を行うことで、全体収益20%の向上を見込む。
リンク先にて各実証成果をご覧いただけます。